賢さとは、自分という乗り物を上手に使いこなすこと。
ハローウィンのワクワクする空気感が溢れる渋谷の土曜夜、騒がしい街の隅っこで学生時代の友人5人組で、しっぽりとおでんを突っついた。
順々と近況報告をしていく中で、Aくんは、8年間付き合っていた彼女と別れて傷心中との情報が共有された。穏やかで優しいAくん。私はこのような心が綺麗な人種に人生支えられてきたこともあり、個人的にはとても好きなのだが、彼自身「俺なんかと付き合ってくれる女の子いるかな~…」とがくりと肩を落とており、「まぁ、お前、優しすぎるよなー。それだと面白みに欠けて、飽きられるよ!」と周りに茶化されていた。
自信を失った友人を前に、この現状をロジカルに分析してみた。
まず、大前提として、「自分なんていいところがない」と投げやりになるのは、あかん。一番やってはいけないことだ。
もちろん、何かに躓いた時、大きなショックが訪れた次の瞬間、このように自信喪失することはあるだろう。しかし、ネガティブなマインドを持ち続けることは即ち、自分自身の魅力の探求を放棄することだ。確かに人は皆、自分の魅力を客観的に分析することは難しく、嫌な部分の方が目につきやすい。他人に見つけてもらって、初めて気づく自分の良さもあるだろう。
それでも、だ。
自分の魅力を発掘する責任を放棄してはいけない。
この世に、魅力がない人はいないが、魅力を上手く引き出せない人はごまんといる。そして、自分の魅力を引き出すこと=自分という乗り物を上手に使いこなすことであり、仕事でもプライベートでも、自分をうまく使いこなせた人間だけが、自分の思い描く人生を手にすることが出来る。
そして、魅力とは、「ハードスキル」x「ソフトスキル」x「パーソナリティ」の掛け算である。
更にこの3つの要素が、かけ離れて、大きな体積を形成すればするほど意外性が生まれ、人間としての面白さ・深みが増す。よって、それぞれの要素がxyz軸に乗っていると仮定すると3次元に大きくプロットし、大きな三角錐を描くよう、自分を見せる工夫をすると一番効果が大きい。
今までの人生を振り返ってみてほしい。
イケメン・美人なのに、意外とモテない。
お金持ちなのに意外とモテない。
とても優しく、良い子なのに、意外とモテない。
そう思う友人が思い当たらないだろうか?
そう、3次元中1つの要素が突出していても、成果に繋げる(他人からの好意を獲得する/高次元の成果物を産む)ことは、実は難しい。すべてはバランスなのだ。
友人Aを例に出すと、
「ハードスキル(専門職で正社員)」x
「ソフトスキル(人に合わせることが得意)」x
「パーソナリティ(温厚で優しい)」
それぞれひとつひとつの要素はどれも魅力的ではあるが、いかんせんどの要素も距離が非常に近く、意外性が薄い。言葉を変えると、「このハードスキルを持っている人は、このようなソフトスキルを持っているだろうな」と、予想出来てしまう範囲に収まってしまっているのだ。
実際、Aくんには仕事熱心であったり、ハードにスポーツを行う等、たくさんの意外性がある。魅力がある。是非とも上手い組み合わせを探索して見てほしい。
そして、最近とても面白い三角錐を目撃したので、そのエピソードも併せて披露したい。
ある日、友人Bが「今日の午後に、髪を切りに行く」と宣言し、バイバイをした。
その数時間後に、友人たちのグループラインでBの写真が共有されていたのだが、親指と人差し指を使って、iPhoneの画像を最大ズームしてみても、彼の散髪のBefore/After写真に、一縷の変化を見つけることも出来なかった。
美容院に行った後の髪形に全く変化が見当たらない等、女子特有の世界観だと思っていたため、私は目を疑った。ギャル男やイケイケのオシャレイケメンならまだしも、オシャレにも服装にも疎そうなBに限ってそんな細かな髪芸を繰り広げているはずがない。
そう思い、私はその秘密を探るべく、Bに会いに行った。
すると、Bは後ろ髪と横を短く切っており、前髪は伸ばしているという髪芸を展開しており、そのBefore/Afterの違いは確かに正面から確認することが出来ない、細かく手が凝ったものであった。
同時に、とてもとても、似合っていた。
非常に些細な出来事ではあったが、普段控え目で質素、且つタイがどこにあるかもわからずに海外旅行に行きたいと主張するBは、とてもじゃないが、自分を良く魅せる細かい計算ができるような賢いタイプだと全く思っていなかったため、とても衝撃を受けた。
しかし、Bを細かく観察してみると、カバンや服装等、目立つ大きい持ち物はブランド物ではないが、ひとつひとつの小物は高質且つ清潔であり(ボールペンはモンブラン、ハンカチはしっかりとアイロンがかかっている等)、それらはとても上手く組み合わさっていた。B自身は長身イケメン且つ若手の営業職であるため、目立つ高価な持ち物を身に着けていると目立ちすぎて嫌味に映ってしまう。しかし、日常にところどころ細かく丁寧なこだわりを散りばめることによって、たちまち気持ちの良い上品さが滲み出る。
とても器用で、上手な戦略だと感心した。
彼のマトリックスを分析すると、
「ハードスキル(イケメン)」x
「ソフトスキル(上品でセンスが良い)」x
「パーソナリティ(控えめで聞き上手)」
である。
どの要素を抽出しても、イケメンなのに控え目、センスが良いのに控えめ、控え目なのに上品と、どれもうまい塩梅で組み合わさっており、これらが普段の仕事ではおじさんを、そしてプライベートでは後輩女の子を悩殺している秘密であろう。
自分を活かすも殺すのも、結局は自分次第であり、本当の自分なんてどこにもない。すべては見せ方次第なのだ。
せっかく一度きりの人生ならば、賢く自分という乗り物を乗りこなして、大海原をスイスイと気持ちよく駆け巡りたいじゃないか。
Aくん、不器用どうし、一緒に頑張っていこうね。